Friday, May 29, 2009

豚にもソース



  ▱ la crise de la critique ▱
 ┌────────────────────────────────
 │ 豚にもソース
 └────────────────────────────────

   アメリカンはポークを食べない。
   これは半分当たっていて、半分は当たっていない。前半分はクリス
  チャンという宗教的な背景があって、THE HOLY SCRIPTURES中
  の戒律のなかには、豚を忌避するよう書かれている。勿論、旧約を含
  めてTHE HOLY SCRIPTURESを信仰する人々、このなかにはユダ
  ヤ教徒、派生したイスラーム教徒も含めて。後の半分は、新約だけを
  信仰する人々で、カソリック、そしてプロテスタントになるんだけど
  も、それでも、旧約と新約は一体不可分なものをねじ曲げた後ろめた
  さも手伝って、「成る可くは食べない」くらいの消極的なもの。然し
  これが南部。例えばルイジアナ辺に行くと、ポークは好まれて食べら
  ている。だからポークといえば南部が本場。そういう影像は、アメリ
  カンなら誰でもが持っている。

   アメリカ聖書事典には次のように存る。
  
  豚【swine】ギリシャ語:コイロス;ヒュース(雌豚);ヘブライ語
  :ハジール。
  豚は反すうしないので、モーゼの律法の条項により食物や犠牲として
  は受け入れられないものとして規定された。豚肉を食べないという禁
  令は、必ずしも健康上の理由に基づいたものではないが、豚肉を食物
  とすることには危険が伴ったようである。現在でもやはり危険があり、
  その説明としては、豚は見境なく何でも食べる習性があり、腐肉や屑
  肉でさへも食し、旋毛虫症や回虫症といった疾患の原因となるものを
  含めて、様々な寄生虫の温床となることが指摘されている。
  一般にイスラエル人は、豚を特に忌むべきものとみなしていた。その
  為、忌むべき崇拝の最たるものについては、「供え物を捧げる者は-
  豚の血を!」という言葉で伝えられている(参照イザヤ66:3)
  イスラエル人にとっては、豚の鼻に金の鼻輪を付けること以上に不適
  切な事柄は先ず有り得なかった。箴言11:22では、外見は美しくとも
  分別のない女性をその樣になぞらえている。
  背教したイスラエル人は豚肉を食べたが(イザヤ65:4;66:17)、
  外典のマカベア第一書(1:65;ドゥエー)によれば、パレスティナ
  がシリアの王アンティコス4世エピファネによる支配下にあり、同王
  がヤハウェの崇拝を撲滅しようと悪辣な煽動をしたいた折、豚肉を食
  べるのを拒み、神の律法を侵すよりは王の布告に叛いて死ぬことを択
  んだユダヤ人が多数いた。
  豚肉を食べない国民は外にも存在したが、ギリシャ人にとって豚肉は
  美食であった。それが為、ギリシャ文化の影響を受けた結果であろう
  と思われますが、キリスト・イエスが地上での宣教を行っていたころ
  には既に、パレスティナにも、デカポリス地方にかなりの頭数の豚が
  いたようであった。ガダラ人の地方には、約2000頭の豚の群れが
  少なくとも一単位存ったことが史料で確認されている。キリストは自
  らが追い出した悪霊たちに豚のこの大きな群れに入ることを許したが、
  その時、この動物はみな突進して断崖から落ち、海の中で溺死したと
  記録されている(参照マタイ8:28-32 マルコ5:11-13)

   THE HOLY SCRIPTURESは、比喩を把握しないと理解できない
  聖典であるんだけれど、豚も比喩であって、詰まり、「豚は見境なく
  何でも食べる習性があり、腐肉や屑肉でさへも食し、旋毛虫症や回虫
  症といった疾患の原因となるものを含めて、様々な寄生虫の温床とな
  る」とは、「見境な」く信仰する者を指していて、使徒ペテロは、信
  仰を捨て、以前の生き方に戻ってしまうクリスチャンに関して「洗わ
  れた後にまた泥のなかで転げ回る豚」と記録している(ペテロ第二2
  :22)。「豚に真珠」という言葉はこのTHE HOLY SCRIPTURES
  から来ているのは諸賢もご存知だろうと希うんだけれども、その意味
  を改めて説明すると、神の教えやその価値を認めない人に、その霊的
  なものを分ち与えるのは賢明なことではない、という意味で、キリス
  トは、その説明を、「豚には真珠の価値を認める能力はない」と使徒
  たちに説話されている。ただ、豚の名誉のために俺が言うのは、豚は
  不潔ではないということだろう。何でも喰うことは事実だけど。
   このように信仰というものは厳しいものであって、その人の一生を
  左右するものだということは、食べること一とつとっても疎かには出
  来ないということ。そしてこのアメリカを含めて、クリスチャン世界
  の生き方というのは、報じられている浮かれ騒ぎは、アメリカ全体の
  ほんの一部の、しかも目立つ部分だけを抜粋したようなものであるこ
  とが、ちょっとだけは判って貰えるかも知れない。
   俺はクリスチャンだけれども、神の律法に背する罪を負う者である。
  組合系であることは、誰がどんな詭弁を弄しても、聖典を読めば一目
  瞭然に律法として書かれているのだから。だからこそ、だからだが、
  罪を自覚しているかどうかが大事だと思っている。罪でないと詭弁を
  弄するのは、自分にまで叛くことになるだろう。そういう人々が異常
  に多い。罪であることを認めて、その上で、クリスチャンと名乗るの
  ではなく、THE HOLY SCRIPTURESを信じているが、俺の場合に
  はいちばん適切な自己規定かも知れない。

   さて、それは豚を喰ったという話。
   豚肉料理はそれこそ世界無尽蔵で、俺なんかは北京料理が代表して
  旨いなぁと意うし、湖南の毛家菜はにんにくと炊き込んだものも絶品
  だし、日本のトンカツもやっぱり旨いと意へば、真骨頂は我がバーベ
  キュー・バックリブの凄味もだろう。
   そして昨夕久しぶりに作ったのが、ルイジアナ・ポークチョップだ
  った。アメリカでのポーク料理の本場はルイジナに代表される深南部。
  ケイジャンと双ぶ料理で、LAでもその名も「ポーク」と題するお店
  があるほど。本来なら、焼き上げたポークの上に、真っ黒なペッパー
  を煮込んだソースがのせられてあるのが絶品なのだけど、俺一人でそ
  のソースは時間もかかって終うので、そうしたケイジャンではなく、
  普通のアフロの家庭で食べられているものを作って見た。
   ポークソテーの場合は、バターをたっぷり使った、バター焼が美味
  で、その上にマーマレードか、ピュアな蜂蜜をかけると、これまたア
  フロ料理になる。とても旨いものなのだけど、今回は、ケチャップと
  ソースを使った、チョップに。
   ここでも旨さの鍵は、ソースになる。日本に於いてもトンカツには
  ソースが欠かせない(俺は一晩置いた冷えたとんかつに醤油が大好き
  なんだけど)。筆頭は、ブルドック、次にカゴメ、続けば神戸のドロ
  ソースもあり、さいきんでは、農場で作る独立系のソース。或は浅草
  ソースであるとか限りがないが、世界的な市民権を得ているのは、も
  はやブルドックかカゴメということになる。ただ、それはトンカツの
  話ではあって、普遍的有効性を持たない限界も同時に負っている。特
  に、ポークチョップの場合、ブルドックなどは、味わいが間延びし放
  ちで冴えない。インパクトが結構弱いのは、煮るとよく判る。その点
  では、LEE & PERRINSのウスターが最上だと俺は意う。創業183
  5年。日本なら天保年間に産声を上げてより、アメリカの唯一の欠か
  せないソースとして君臨して来た歴史的な一品。その原点回帰の製品
  として、<シック(重厚)>が新発売されたので使って見る。そもそ
  も原点を謳っているのだから、このソースの始まりは、重厚だったの
  だ。紙袋に1本1本包装されたソースの封を切り、ひとつまみ味わえ
  ば、豊穣な果実のもたらす奥深い味わいに、ピリッとした辛さが絶妙
  なのだ。
   先ずは、豚肉。これは、ロースでも可いし、フィレでも構わない。
  その食で食べたい部位を択ぶ。昨夕はロイン(まぁロースのこと)。
  下処理は、水洗い。そして一枚一枚水気を拭き取り、そこに、モンゴ
  ルの塩を砕いたもの、そしてルイジアナのペッパーを両面にふりかけ
  て、冷蔵庫に30分ほど。お次は、ソースだ。ヘインツ、そしてこの
  LnPをどっさり使う。配分はケチャップ7にウスターが3ぐらい。そ
  れを鍋にかけ、ローリエその外の香草を入れ、極弱火でことこと煮込
  んでゆく。若し煮詰まる危険があるなら、スワンソンのスープを用意
  して置き、少しづつ入れてゆくのだが、こってり感を失ったら、もう
  チョップ・ソースにはならないので、極力我慢する。これはもう火加
  減に集中するのが賢明だ。
   後は寝かせた豚肉をこんがり焼き上げ、途中、ブランデーで火を飛
  ばし、火が通ったか通らないかの加減で、チョップ・ソースをごっそ
  り入れ、肉に絡めで、沁み通らせるように弱火でボイルしてゆく。肉
  とソースが絡むか絡まないかが、旨さの秘訣だろうと意う。盛り付け
  は、肉汁と邂逅したソースを上からこってりに掛けまわして出来上が
  り。

   ポーク・チョップには、ぜひとも、日本で入手できるなら、LnPの
  <シック』を使って貰いたい。ポーク・チョップの味わいがこれほど
  豊穣なものであるか、納得されるはず。

                            - 了 -

No comments: