Saturday, June 13, 2009

まッ、芝居を打つことですな -太郎と鶴平の密談-



  太
  「邦ちゃんを切らざるを得なくなってしまいました」
  鶴
  「困りましたなァ。総理。『抜き打ち』とあれほど私が云ったぢぁな
  いですか」
  太
  「いや、政局にしてはいかんと思ったんですよ。それは困る」
  鶴
  「それは違いますなァ。政治の最後は政局です。勝つか負けるか。そ
  れだけですゾ。困るなァ、あんたも太賀吉さんの子供だ。それぐらい
  判ってなきゃ……」
  太
  「いや『抜き打ち』は考えたんです、俺は。あ、すみません。ただ、
  あっちも首を縦に振らないきゃ、こっちは俺を追い落とす動きがあっ
  て……」
  鶴
  「あっちってんのは信濃町かね」
  太
  「え、まぁ」
  鶴
  「あとは神奈川と三田が動いているでしょ」
  太
  「お察しの通りです。上げ潮なんて顔ぢぁない、下げ潮のようなでけ
  ぇ顔の男も動いていてですね……」
  鶴
  「こんどの人事はまぁ、十中八九、三田の学者が動いてますなぁ。む
  ぅううん、まぁ危機感だろうね。総理、潮目というものがある。何事
  も潮目を読めなければ、負けです。こんなことを云っちゃいけないが
  、潮目は郵政見直しです。そこまでは声にはなっていないが、明らか
  に、総理の仰るでけぇ顔とか、渡り渡世の女とかね、群馬の下手な若
  造なんか大したことぢぁアない」
  太
  「そうですか?」
  鶴
  「だから困るんだ。それぢぁ。我が国はアメリカと連動しておる。そ
  れについちゃ、あんたの爺さんなり私等が敷いたレールだし、それに
  ついてとやかく云う奴もそりゃいる。河野も三木も音羽の爺さんだっ
  てあれこれ強がりを云ってたが、爺さんと私らの敷いたレールは最善
  だと思っておる。それが繁栄にいった。そこでだね、我が国は米国の
  影響の元に存る。そうぢぁありませか?」
  太
  「まぁ、おいらとしては、そろそろ対等にしなきゃいけないがと意い
  ますがね」
  鶴
  「あんたに出來る訳がない。まぁ正確にいうならあんた以外の人間に
  もそりゃ出来んよ」
  太
  「───」
  鶴
  「米国を見れば判るでしょうが。潮目は先に変わった。とうぜんこっ
  ちの潮目も変わる。がたがた云ってる連中は、すでに潮目に乗り遅れ
  た。あいつらが云う守旧派なんてッレッテルがこんどは自分たちに烙
  されてるのを判っちゃいない、まぁ、皮肉なもんですなぁ」
  太
  「そんなもんですかい?」
  鶴
  「時流はそういうもんです、総理。流れが早ければ早いほど、流れに
  乗ったもんは、その流れを先へ見極めんと、すぐ流れに弾き出される。
  まぁ、なんとか託児所の連中もそうだが、あいつらは尻馬に乗っかっ
  ただけ、党にとっては百害有って一利なしだ。さっき云った、連中も
  もう乗り遅れとる。自縛っていう奴でしょ。大きな旗を立てて流れだ
  流れだと叫んだはいいが、あちらさんは逆だ。旗が降ろせんのだねぇ。
  政治というものは、旗を立ててもそれを降ろすことができるのが政治
  だ。そういうもんが判っちゃいない。だから降ろせんのです。三田の
  バカ学者もそっちだわな」
  太
  「ぢぁ、なんとかなるんでしょうか?、策は?」
  鶴
  「あんたが『抜き打ち』をしとればよかったんだが、それが出来なっ
  かっとなるとぉ───むぅううん」
  太
  「邦ちゃんも出ていっちゃうことはないと意うんですが……」
  鶴
  「総理、あんたにも云ったけれども、総理は総理だ。伝家の宝刀を使
  うタイミングを逃しちゃいけませんゾ。そうした終わりだ。前にも云
  ったけれども、一度権力を手放したら、その後、それを取り返すのに
  は金は幾ら有っても足りん。政権は死守なさい───と云った筈です
  がね」
  太
  「それは、それはちゃんと銘じております」
  鶴
  「ぢぁ、云うが───。あいつらこそ守旧派だっと持ってゆく。恐ら
  くそうなる。世界の潮目がどこを採っても変わっとる。あいつらこそ
  が旗を降ろせない者たちだってことを、今や郵政民営化の旗なんか持
  てる連中こそ、国民のことなぞ判っちゃいないってことを、印象づけ
  なきゃならんね」
  太
  「できますか、そんなこと───」
  鶴
  「あります。ラフレ埼玉だ。あそこをマスコミに突かせればいい」
  太
  「それなんですか?」
  鶴
  「あのなんだ成金の貸金が狙ったのは、ラフレだろうね。まぁ外のか
  んぽはおまけ見たいなもんだ。そこを西川が乗ったという話だ。まぁ
  民間企業で云えば、背任だ。そこです、突けば流れがまた変わる。そ
  れは、恒雄さんにやってもらうんだねぇ。やってくれるでしょ」
  太
  「そりゃ、追い落としぢぁないですか───」
  鶴
  「困りますねぇ、どこぞのお坊ちゃんぢぁ」
  太
  「いや、ちゃんと愛人だって店出させてやってますよ。それぐらいの
  器量はあります」
  鶴
  「そういうところだけでもねぇ。まぁいいでしょ。これは大きな博打
  だが、不平を云う連中には出ていって貰う。落とすんです、選挙で」
  太
  「いまの情況から見たら、それや下野ぢぁないですか?」
  鶴
  「いや」
  太
  「といっても、信濃町のほうも」
  鶴
  「再編です、再編するしか手がない」
  太
  「そんなことできっこないでしょ。野党は固まっているンですよ」
  鶴
  「困るなぁ、それぢぁア。まず、託児所の連中なんか吹けば飛ぶ奴等
  だ。直ぐ落ちる。でっけえ顔やその複数は入ってくるでしょうが。あ
  の女は、我が党が下野したら、こんどはまた、何事もなかったように
  民主党へ行って大臣狙いで行く。まぁ厚化粧な女は決ってそうだ」
  太
  「はははは」
  鶴
  「そこでだ。旗を降ろす連中は降ろさせればいい。まぁ選挙に落ちた
  らただの人。そこです。一人一人どうするかを迫れば可い。託児所の
  連中でも、まぁ乗ってくる連中は党が面倒見ようで構わない。選挙の
  次第では下野する数になるかも知れないが、だからこそ信濃町にも云
  える、ただの野党で可いんですか、とね。信濃町はぜったい付いてく
  るでしょうなぁ。
  大義名分を立てるにはね、総理。神奈川と三田の路線をはっきり切ら
  んと前へ進めない。これがあんたが政権を死守できるかどうか、党が
  生き残れるかどうか───そこです」
  太
  「いや、そうは仰るけれども、俺も賛成な部分もあるし納得しかねる
  部分もあって、そうそう簡単には否定できません」
  鶴
  「あんた、それぢぁ政治家ぢぁない。生きるか死ぬしかないのが政治
  ですぞ。まぁタイミングもよるが、いまの情況は沈み行く船だ。まぁ
  そういう嗅覚もない連中が多いが、選挙次第では党は割れますな。そ
  の前です。邦夫くんには子会社をやって貰う」
  太
  「どういうことです」
  鶴
  「沈み行く船には誰も来やしません。それでも下船しませんという連
  中はあんたに付いて行きますよ。そこで踏み絵です。だが───」
  太
  「だが───とは?」
  鶴
  「大義名分ですな、その旗を立てなきゃいけない。いまの旗は色が判
  らん。旗幟を鮮明にするとして、まぁそこの旗幟はなるべく大きな事
  や坊ちゃん風のもんぢぁダメです。だが、子会社が先です。そこに窓
  口になって貰う。邦夫君なら邦夫君にやって貰う。そこを受け皿にし
  て、選挙後連立です。亀井君も、郵政見直しなら乗ってくる。ただそ
  れだけで済む」
  「政治は詭計です。ほざいてる連中も権力の側に存るからあんな事を
  云ってられる。脅せば可い。腰砕けですよ」
  鶴
  「まッ、芝居を打つことですな。敵を騙すより身内を騙すほうがこの
  際は得策でしょ。党が少数になったとしても、子会社と親戚の会社を
  合わせればなんとかなるでしょうなぁ。大義名分も立てられる、幾つ
  もある。相手は郵政見直し。それを呑む。ガラガラポンで出る目は、
  どちらにしてもあんたには有利になる筈です。それぐらいの構想では
  ないと勝てませんゾ」
  太
  「しかし脱党者なり反対派がどれぐらいになるか───」
  鶴
  「多かろうが少なかろうが構いやしません。米国が、市場原理主義ぢ
  ぁダメだとなった、欧州の情勢もそうです。欧米がそうなら、我が国
  もそうなる、連動する。これが私にやぁ知らないがグローバリズムの
  産物というもンぢぁないですか。あいつらが言い立てるグローバリズ
  ムによってあいつらが退場する。そこです、突くのは」
  太
  「しかし手駒が───」
  鶴
  「そうだな。智慧者がいないか。そこが問題だねぇ───」

                            

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