Monday, June 15, 2009

アーリントンの篝火



   なんとか父が希望する部品を近くのクラシック専門のリペア・ショ
  ップ(創業が1952年でいまは三代目のまぁクルマ大好きな家族経営
  のお店)のジャン(オーナー)に電話して置いた所が、「探したらさ
  三つ純正の新品が残ってる見たいだから」)とのことで、さっそく吉
  報を父に電話した。その会話のなかで父がこういう。
  「君、ブースターは買ったかな?」
  父に云わせると、「テレヴィも君のことだからアナログだろうと思っ
  てね。もうデジタルに変わったんだことも知らないのではないかと思
  って」と云う。父のそれは「大丈夫か」というニュアンスではなくし
  て「どうせアナログ電波が止まって混乱してるんでしょう」的な嗤い
  と揶揄が込められていた。これだから利巧科系は苦手だ。

   そこで、
  「あのですね、『トワイライト・ゾーン』をモノクロームのテレヴィ
  ジョンで観たあなただから言いますが、やっぱり『ルーシー』にして
  も『ルート66』にしても、『ペリー・メイスン』にしても、あの受
  像機で見るといまののっぺりしたデジタル受信機では味わいがないで
  すよ。うちのはちゃんと使い分けていまして、現代のものは現代の受
  信機。といってももう6年前ほものですが、モノクロームはちゃんと
  貴方の時代のもので観ていますよ。どうです、いいですよ、試してみ
  たらいかがです?」と返球したら、応えに窮していた。hahaha
   まあ豪速球を投げても致し方ないので、テレヴィジョンというもの
  がこれで終る。一とつの時代が終るという趣旨の会話を兩人でし、父
  にとって最も印象に残って、いまでも生々しくその時と自分をまじま
  じと今日のことのように、そして明日もそうであることのような、そ
  うした出来事はなんだかと訊ねた。

http://www.youtube.com/watch?v=QIA_UqgLmuQ

http://www.youtube.com/watch?v=_xWW4WmBtk8&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=BLmiOEk59n8&feature=channel_page

http://www.youtube.com/watch?v=ouRbkBAOGEw&feature=channel_page

http://www.youtube.com/watch?v=TpicOfFajNE&feature=channel_page

http://www.youtube.com/watch?v=huBv5ypPF9I&feature=channel_page

http://www.youtube.com/watch?v=55PYQbu2iXs&feature=channel_page

http://www.youtube.com/watch?v=AX7BChan-xg&feature=channel_page

http://www.youtube.com/watch?v=_23UyIuEzK4&feature=channel_page

http://www.youtube.com/watch?v=YY1g9BCBtVs&feature=channel_page


   「JFKです。あの時代ぜんぶですね。いろいろあったけど、私は
  JFKの映像を観ると、ぜんぶ後は消えてしまいますね。君には判ら
  いかも知れないけど、希望が凄くありました。でも希望の向こう側へ
  の不安もすごくあった。ですから、暗殺のときはショックではなかっ
  たように思います。でも観たくないから、観ていません。いま観れる
  手段はいくらでもあるんですが、なにか胸騒ぎがしますから」
   父の胸中は同時代を体験していないから、共有することはできない
  けれど、けれどもJFKの暗殺から今日に到るまで、アメリカンの心
  から離れないのは、その劇的さの時系列表だけではない、この国のあ
  りようと、否、それより以前の人の心のなかに入ってきた一人の男と
  その男そのものの希有さ、夢や希望やそういったすべての記号を帯び
  たからだったように思う。それでなくては説明はできないかも知れな
  い。
   アナログが終った。


http://www.youtube.com/watch?v=VjnygQ02aW4&feature=channel_page

   そしてデジタル。オバマの時代───。もしかしたら父の時代のよ
  うに、希望とそして同じく混沌を我がむねの中にみんな診ているのだ
  ろうか。
   またJFKは永生している。


http://www.youtube.com/watch?v=4DMURserfvA&feature=channel_page

   ということはデジタルって何だろう。
   結局は、人という究めてアナログな存在のツールでしかない。だか
  らデジタルなんてものは結局は大したもんぢぁない。
   そういう意味で我が家はアナログでこれからも行く。アーリントン
  の篝火のように───。
   そう話したら、父は黙って電話を切った。

                            - 了 -

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